幽幻道士
<キョンシーズ>

1986年、台湾映画  原題:彊屍小子

※地方周り上映会では「ハロー・キョンシー!」という題名で上映。ビデオ・LDは「キョンシーズ」としてTV放映とは別バージョンがソフト化。

■ソフト情報
ビデオ発売:大映ビデオ(キョンシーズ版。字幕スーパー)
LD発売:大映ビデオ(キョンシーズ版。字幕スーパー)
DVD発売:アット エンタテインメント(幽幻道士版、キョンシーズ版を編集して収録。字幕スーパー、日本語吹替版。)

STAFF
監督:チャオ・ツォンシン
制作:ツァイ・ソンリン
    チン・チュンリャン
武術指導:チャオ・ツォンシン
脚本:ヤオ・チンカン

CAST(声優)
テンテン:リュー・ツー・イー〈シャドウ・リュウ〉(高田由美)
金おじいさん:キン・トー(宮内幸平)
シャー親方=親方キョンシー:ウォン・ツォン・イー(田中秀幸)
チビクロ:チン・シャオ・チャン(坂本千夏)
スイカ頭:リュー・ツー・ハン〈ジョニー・リュウ〉(桜井敏治)
デッパ:ファン・ゴースー(佐々木望)
チビトラ:チャン・タイスン(松岡洋子)
デブ署長:バン・サン(内海賢二)
キョンシー隊の道士:リン・クォンユン(緒方賢一)
ベビーキョンシー:ホン・イー・ユェン(三浦雅子)
殺人キョンシー:チュ・ハクユン(緒方賢一)
ゼンさん:チェン・スンユン(藤本 譲)
茶飲み友達:チェン・スンユン(屋良有作)
親分キョンシー:マー・チャン(屋良有作)
オカマキョンシー(鈴木勝美)
その他(小野健一、吉村よう、古田信幸)

STORY:おじいさんが語る妖怪伝奇とは?

夏休みに子供達に逸話を聞かせるおじいさんの世にも怖い昔話。
旅回りの大道芸一座の親方・シャー親方は孤児のチビクロ、スイカ頭、デッパ、チビトラ達と各地を回っていた。
ある夜、子供達と麻雀をしている所にキョンシー隊が通りかかる。キョンシー隊の道士は無理を言って親方と賭け麻雀を始めるが、その間に子供達のイタズラでお札の取れたキョンシーが暴れだす。親方と道士で何とか抑えるものの、親方はキョンシーに影を踏まれてしまう、キョンシーに影を踏まれた者には不幸が降りかかるのだ。親方に魔除けのお札を渡し去っていくキョンシー隊。
そして、そのせいか親方の不幸は怒涛のように押し寄せる。
契約していた芝居小屋の小家主・ゼンに契約違反をされ、稼ぎ口が無くなってしまった親方は馬車の馬を売り、その金で博打に賭けるが結果は惨敗。仕方なく路上で大道芸を広げるものの、客を失ったゼンの策謀で児童虐待の罪として親方は警察に逮捕されてしまう。
取り残された子供達は警察署長の知り合いである道士・金おじいさんとその孫・テンテンの住む儀荘に預けられることになる。
ある夜、キョンシー隊を見つけた子供達は親方の復讐に影を踏んだキョンシーを下水道に落してしまう。そして、キョンシーの流れ着いた所は、皮肉にも親方が収容されている留置場だった。暴れだすキョンシーから警察官や署長を守る為に、キョンシーに噛まれ殺されてしまうシャー親方。
もう一度親方に会いたいと願った子供達はテンテンに術をかけてもらい黄泉の国の親方に会おうとする。だが、死後49日たたない間にこの術を使うと死者はキョンシーと化してしまうことを知らなかった為に、親方はキョンシーとして甦り、暴れだすのだった。
契約を一方的に破棄した小家主ゼンを殺し、凶暴化していく親方キョンシー。
親方を静める為に子供達とテンテン、そして金おじいさんはどうするのか!?

解説:驚異のぷっつんホラーは至高にして最強?

吹替がTV放映のみだった事もあり、多少なりとも尾びれがついて伝説化しちゃってたこの映画だが(字幕版も出てだいぶ経つので大手チェーン店ではほとんど置いて無いしね)、今回DVDがめでたく発売(仕様に不満はあるものの)されたので今回ピックアップ。
霊幻道士がヒットした80年代中盤、70年代には隆盛だったカンフー映画もそこそこになり、ジャッキーは「プロジェクトA」等でスタントアクションに取り組むようになり、ジョン・ウーは「男たちの挽歌」でノワールというジャンルを確立させ、香港映画もカンフーだけじゃない多様なジャンルが日本にも入ってくるようになる。その中でヒットしたのが「霊幻道士」であり、本来なら「こんな気持ち悪いもの」といぶかしむ親もその中にあるカンフーやコメディの味付けにより感覚が麻痺したのか(笑)、子供にもこぞってビデオを借りてあげるくらい普及。
そしてその中で地味に発売されたのが「キョンシーズ」なのだが、その後TBSにて「幽幻道士」と改題され放映したところこの手の映画にしては記録的な視聴率を出し、テレビ局までもがゴールデンタイムにホラードラマを制作して放映する異常事態(いや、私はうれしいけど)にまで発展。
この作品のビデオ版である「キョンシーズ」のビデオの売上は私が知るわけも無いが、恐らく時期的にもそんなにVHSは普及してなかっただろうし、ただの「ビデオバブル時期に沢山発売された中の一本」として埋もれていたであろう。 それがやはりTVというものは「タダで見れる」点や「何気にチャンネルを回せば(当時は回してたんだよ)やってる」という、段違いな普及力のお陰で、「霊幻道士」のヒットでキョンシー映画に餓えていた子供達は見事に飛びつき、そこから派生した波は一躍テンテン他劇中に活躍する子供達にも目を向けられ、プロモーションで来日するほどの人気者になった。
そのあまりの知名度の高さのおかげで「霊幻道士って幽幻道士のパクリなんでしょ?」と言ってくる人もいるほど・・・まぁ、そう思ってる人にはネット上に無数にある映画紹介サイトを見てから質問してほしいところです(笑)。
さて、やっと本題に入ろう。この作品の「幽幻道士」のタイトルはTV放映時に付けられたもので、ビデオタイトルは「キョンシーズ」となっている。
中身は編集が違うのでOPとEDは違う。どう違うのかと言えば、キョンシーズは「一つのストーリー」であるのに対し、幽幻道士は「昔話をおじいさんが聞かせる」感じになっている・・・このシーンがあるか無いかで「映画自体が2時間近く使ったおじいさんの作り話」か「これ自体が総て」かで全然印象が違うのだから大したものである。ただ、「物語の主軸に自分を持ってくる」金じいさんのあざとさは相当なものだろう・・・友達にも「金じいさん」って呼ばれてたし、「私じゃありません」とは言わせないぞ、ちゃんと見たからな!(笑)
気を取り直して、吹替の話題。恐らく視聴者のメインターゲットは子供達なので・・・かどうかはわからないが、日本語吹替の声優陣にはアニメで活躍している声優が大量にキャスティングされている。普通なら「野沢雅子!」とかの方向にいきがちではあるが、(予算が無かったのかもしれないけど)この映画では(当時は)若手の声優が大量起用されており(勿論今では皆ベテラン)「いつもの洋画劇場のメンツの吹替」に囚われていないキャスティングも魅力。だって、あの当時アニメでは美形二枚目ばかりやっていた田中秀幸(テリーマンといえばわかるかな?)に、情け無いヒゲで、しかもキョンシーになってしまうオッサンの役をやらせるなんて・・・当時としてはなかなか出来ないんじゃないかと思うし、それは後の作品で関わってくる石丸博也にも言える事(これはまた別の機会に)。
そして子供達の人気になったもう一つの理由は、活躍するのが自分たちと同世代の子供達だという事、そして子供達もなかなかのアクションを決めれるという事だろう。霊幻道士は大人なのでかっこいいとは思っても感情移入はできにくいという盲点を突いているのかもしれない。
だがストーリーの展開上、道士も出さないと・・・と思ったのか(んな事は無いと思うけど)、幽幻道士である金おじいさんも登場、子供達を見守るやさしくも厳しいおじいちゃんとして、そして子供達を守る頼もしい道士として面白さの向上に貢献している。
ではここで、キョンシーズと幽幻道士のちょっとした見方を教えよう。
日本語吹替を作る際にいくつか曲が挿入され、場面の緊迫感を盛り上げるのに一役買っている。それは親方と下水キョンシーが戦っているシーンだ。原語だと無音で淡々と戦っているのだが、吹替だとそこにBGMが加わり、迫力満点だ!
こういった自由で臨機応変な演出は昔の吹替映画ではよくあった事なのだが、この頃にはもうほとんどやっていない事なので、その点でも吹替スタッフの演出が上手かった事を証明しているだろう(近年では、TV[スター・トレック<ディープ・スペース・ナイン>」のOPでタイトルコールを外人の声で入れたりしている)。
そしてそれは声優にも言える事でこの時点でほぼ全作同キャストで製作されているくらいだ(ベビーキョンシーとデッパは交代したが)。
オススメ度:☆☆☆☆1/2 、 評点:90点

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