ミラクル・ファイター
1982年、香港映画  原題:奇門遁甲、英題:THE MIRACLE FIGHTERS

■ソフト情報(※海外版は原則的に日本語字幕・吹替共に無しのソフトがほとんど)
ビデオ発売:ポニー・キャニオン(字幕スーパー、日本語吹替版)
海外版DVD発売:デルタマック(香港、日本語字幕無し)

STAFF
監督:ユエン・ウーピン〈袁和平〉
製作総指揮:レイモンド・チョウ〈鄒文懐〉
製作:レナード・ホー〈何冠昌〉
脚本:ユエン・ウーピン〈袁和平〉(和平小組)
撮影:マイケル・マ
アクション監督(武術指導):ユエン・ウーピン〈袁和平〉
                 ユエン・チュンヨン〈ブランディ・ユエン、袁振洋〉
                 ユエン・シュンイー〈袁信義〉
                 ユエン・チョンヤン〈袁祥仁〉
                 サイモン・ユエンJr.〈ユエン・ヤッチョウ、袁日初〉
                 チョウ・チュンヘン(袁家班)
音楽:タン・シーラム
音楽製作:アバロン・ミュージック
道具:リャン・ウィン
制作:ピース・フィルム・プロダクション(和平電影製片〈香港〉公司)
配給:ゴールデン・ハーベスト、フォーチュンスター

CAST(声優)
ジュコン:サイモン・ユエンJr.〈ユエン・ヤッチョウ、袁日初〉(竹村 拓)
カオ将軍:エディ・コー〈コウ・ホン、高雄〉(石森達幸)
火女:ユエン・チョンヤン〈袁祥仁〉(鈴木れい子)
雨男:レオン・カーヤン〈梁家仁〉(清川元夢)
大法師〈蝙蝠大師〉:ユエン・シュンイー〈袁信義〉(飯塚昭三)
道士:ウォン・ハー〈黄蝦〉(塚田正昭)
タコ壷小僧:ユエン・チュンヨン〈ブランディ・ユエン、袁振洋〉(目黒裕一〈目黒光祐〉)
化粧品売り:ユエン・チュンヨン〈ブランディ・ユエン、袁振洋〉(目黒裕一〈目黒光祐〉)
皇帝(仲木隆司)
子供時代のジュコン(鈴木れい子)
師匠の肖像画:ユエン・シャオティエン〈袁小田〉
その他(西川幾雄、岡 和男、石川ひろあき)
日本語吹替版翻訳:初瀬松男
日本語吹替版演出:春日正伸
日本語吹替版音響効果:南部満治、大橋勝次、河合 直
日本語吹替版制作:ザック・プロモーション

STORY
1663年、漢民族と満州民族の婚姻が禁止されている中、漢人を妻にしたカオ将軍は皇帝により妻を殺され、地位を追い立てられる。皇帝は英雄であるカオを疎ましく思い、何かしらの手段で揚げ足を取るつもりだったのだ。皇帝の僕である大法師の蝙蝠大師は、皇帝の名でカオは命を狙われるが、間一髪のところで王子を人質に取り逃走、ジュコンというみなし子と称して育て上げるものの、傘売りとしての生活は荒れ、ジュコンに八つ当たりする日々。毎日飲んだくれ、忌まわしい過去を忘れようとしていた。
しかし、大法師の刺客に発見されてしまったカオは瀕死の重傷を負う。
薬を探しに回るジュコンは火女と隣家の雨男という2人の老法術使いの元へ辿り着く。しかしこの二人は犬猿の仲で、同じ師匠を持ちながら、いがみ合いながら暮らしているようだ。
雨男の家に来たジュコンは理由を話し薬を分けてもらうが、また刺客に命を狙われる事を悟ったカオは被害が及ばないようにジュコンを家から追い出してしまう。しかし、その直後、大法師が現れ、カオは激闘の末、ジュコンの目の前で殺されてしまう。大法師に捕らえられたジュコンは幽閉されてしまうが、見張りのタコ壷小僧の隙を突き脱出、火女と雨男の元へ身を寄せ、彼らから術を教わる事になる。しかし仲が悪い二人に挟まれジュコンは振り回されっぱなし。奇想天外な修行の末、二人から様々な術を教わったジュコンは全国から強者が集まる「全国方術大会」に出場する事になるが、大法師もその勝者を狙い、彼らの命を狙っていた・・・。

解説:ユエン兄弟版・鬼打鬼登場!
※この映画はキャストが素晴らしいのでキャスト紹介を中心に解説。
「酔拳」・「蛇拳」や今では「マトリックス」、「ワン・チャイ」シリーズですっかり有名になったユエン・ウーピンを始めとするユエン兄弟が鬼打鬼のヒット流行していたオカルトホラーを取り入れて製作したカンフーアクション映画。
正確にはキョンシー映画ではないけど、鬼打鬼に感化された亜流っちゅー事で紹介しようと思う。
日本では、87年に「東京国際ファンタスティック映画祭」で上映、そしてTV放送やビデオ発売などがされているものの、イマイチ知名度は少ない。
映画的にはカンフーアクションなのでオカルト表現はあっても恐怖表現は極力控えられ、代わりにワイヤーをほとんど使わない古典カンフーアクションに法術表現を混ぜたコミカルなアクションが見物。ギャグ表現は好き嫌いが分かれるが、個人的には妖術使いの相棒の喋る鯉が、大会中に唐揚げになっていくくだりが面白いと思う。
なお、奇門遁甲とは、古くから実在する占術の1つだけど、映画では法術の1つとして大分アレンジがなされている(この辺は酔八仙の型のアレンジと似たとこがあるかな?)。もっと詳しく知りたい方は、コチラから参照くださいませ。
カンフー映画として、(当時としては)なかなかの芸達者が揃ったこの映画、主人公を演じるのは、サイモン・ユエンJr.(袁日初、オヤジはサイモン・ユエンことユエン・シャオチェン。袁小田)、ちょっと大○源太氏に似ている(笑)役者で、ユエン兄弟の中では、一番二枚目である。
火女役はユエン・チョンヤン(袁祥仁)、香港電影迷は知ってると思うが、ユエン兄弟の映画の中でも奇抜な風貌で役も奇抜な役ばかり、氏は男性だが、役者デビュー作である本作も、婆さん役である(笑)。なお、武術指導の腕にも長け(元々武術指導として映画界入りだし)、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ天地黎明」、「マスター・オブ・リアル・カンフー大地無限」、近年ではハリウッドにて「マトリックス」、「チャーリーズ・エンジェル」でも武術指導を務める。
雨男役のレオン・カーヤン(梁家仁)はブルース・リーにスカウトされて映画界入りしたという経歴の持ち主らしく、武術の経験はあまりないが、持ち前の運動神経で、様々なアクションを多彩にこなす役者として有名。「燃えよデブゴン」、「ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ烈火風雲(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ天地雄覇)」、「モンキーフィスト・猿拳(燃えよデブゴン5)」、「ツーフィンガー鷹」、そして堂々の主演を張りエディ・コーと壮絶なバトルを繰り広げる「スリーピング・モンキー・睡拳(ビデオ題:秘法・睡拳)」などに出演している。
悪の大法師役、ユエン・シュンイー(袁信義)は「酔拳」の続編、「南北酔拳」にてジャッキーが演じた立ち位置のキャラを熱演、その後も老若分け隔たり無い役を演じている。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝アイアンモンキー」ではコミカルで本役とは180°違うサンガン(三眼と書いてサンガン)隊長を演じている。氏も武術指導として前途の「天地黎明」や様々な映画に参画している。
カオ将軍役のエディ・コー(高雄)は「香港の夏目漱石」として(管理人が勝手に命名)様々な武侠片や動作片映画に出演、チョイ役から主人公まで演じる「仕事を選ばない男」である(笑)。代表作は「孔雀王」、「ジョン・ウーのソルジャー・ドッグス」、「ザ・SFX時代劇 妖刀斬首剣」、「レッド・ブロンクス」等で、「リーサルウェポン4」でも大きな役で出演している。
ウォン・ハー(黄蝦)は言わずと知れたオジキョンの人で(笑)、今作では金のために雨乞いをするチンケな道士役だが、この時期のカンフー映画に無くてはならない役者でもある。代表作は「酔拳」、「彊屍翻生」、「再来!キョンシーズ」、「捉鬼合家歡」、「妖術秘伝・鬼打鬼(燃えよデブゴン8)」、「霊幻道士」等。
タコ壷小僧と化粧品売りの2役を演じたのはこれまたユエン兄弟の1人ユエン・チュンヨン(袁振洋、チョンヤンとは違う人)、管理人の知ってる役としては「中華道士」のチビ公くらいしか知らないのだが、「ツーフィンガー鷹」、倉田保昭主演の「激突!キング・オブ・カンフー」、また「少林寺・達磨大師」では監督兼武術指導も担当。ブランディ・ユエンとも呼ばれているらしい。少しジェームズ・ティエン(田俊)に似てる気がするが、気のせいかな?(笑)
監督のユエン・ウーピン(袁和平)はユエン兄弟の長兄で言わずと知れたジャッキー・チェンの出世作「ドランクモンキー・酔拳」、「スネーキーモンキー・蛇拳」の武術指導兼監督であり、その後もドニー・イェンを発掘し「ドラゴン酔太極拳(女デブゴン強烈無敵の体潰し)」や「タイガー刑事」、「タイガーコネクション」、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝アイアンモンキー」等で多数起用し、氏の知名度を上げる事にも成功している。他には「ツーフィンガー鷹」、「燃えよデブゴン7」、「レディーファイター詠春拳伝説」、「フィスト・オブ・レジェンド怒りの鉄拳」など多数の香港映画にて参加した後、ウォシャウスキー兄弟に招かれ「マトリックス」でヒットメーカーとなり、現在に至る。
・・・っとざっとメインの人を取り上げただけでもここまで芸達者が出ている映画、あまりに知名度が少ないのはちと悲しい気分ではあるが、カンフー映画好きにはたまらない傑作ではないかと個人的には思う。ただ、いささか泥臭いところもあるが、そこは香港映画好きなら無問題であろう。なお、このメンバーで作り上げたもう1つのオカルト映画として「妖怪道士」や「妖怪道士2」、「精霊道士」がある、特に1はチョンヤン、サイモン共にほとんど変わらない風貌の役を演じており(しかもチョンヤンは爺さんとの2役)エディ・コーは漱石度がコレに比べてUPしている(笑)。
ちなみに、奇門遁甲の意味は最後の最後にオチがあるのでちょっとビックリするかも?(笑)
あと、霊幻3等と同じく、ビデオには本編後におまけが入っている(内容は「もうひとつおまけ」と同一)なのでお見逃しなく(笑)。
オススメ度:☆☆☆1/3(カンフー映画的には) 、評点:79点

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